『ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王』アニメでわからない人の為のネタバレあり原作小説紹介

『ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王』アニメでわからない人の為のネタバレあり原作小説紹介

『ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王』あらすじ

 “ぼくは歪曲王。君の心の中にある歪みに君臨するもの。君が歪みを黄金に変えることができるまで、ぼくはずっと君の傍にいるだろう―――”

二月十四日の聖バレンタイン・デイ。都市のど真ん中に屹立する異形の高層建築〈ムーンテンプル〉の観覧イベントに集まった人々を巻き込んで世界が歪んでいく。人々に甘く囁きかける歪曲王は、すべてがねじ曲がったその世界こそ天国にいたる階段だという。

 そして、そこにはもうひとつの奇妙な影がまぎれていた。

“やはり来たな、ブギーポップ……!”

 人の心に棲む者同士が相まみえる時、終わりなき一日が、幕を開ける。

 書籍『ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王』より

『ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王』の内容

『ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王』は寺月恭一郎という人物が残した斬新なデザインの巨大建造物『ムーンテンプル』を舞台に2月14日のバレンタインデーにそこで開かれたイベントの中で事件が起こります。

 

これまでのブギーポップシリーズと同様に多くの登場人物が描かれ、それぞれの視点で物語が展開していきますが、本作では導入部分が少なく早い段階で事件が起こり、その事件の謎を解いていくという構成をしています

 

そのためこれまでは最後の最後で登場していたブギーポップも本編で事件を追う姿が描写されています。

 

『ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王』で事件に関わるのは、パンドラで登場し『炎の魔女霧間凪の活動に協力している羽原健太郎

 

『ブギーポップは笑わない』で事件の終幕に立ち会いそれを乗り越えた田中志郎

 

田中志郎と同様の経験をした深陽学園の風紀委員長である新刻敬

 

ムーンテンプルという斬新なデザインの建造物にどこか惹かれる女子高生の道元咲子

 

寺月恭一郎に個人的な想いがあり、母子家庭で子供を育てている橋坂静香とその息子である橋坂真

 

また宮下藤花の恋人である竹田啓司もこの事件に巻き込まれてしまいます。

 

  • ムーンテンプル

『ムーンテンプル』という建造物は56歳という若さで亡くなった経済に世界的な影響を及ぼす資産家の寺月恭一郎が残した遺産のうちのひとつで、高さが157mもあり、その建物には窓がなく外観は上層にいくと捻じれており屋上部分は地上とちょうど90°ずれています。

 

窓がない作りの為、通気口と光ファイバーで作られた外光取り入れ用の採光部品が設置されています。

 

更に内部は階というものがなく床階段としてゆるやかにワンフロアで屋上まで繋がっているという不思議な構造をしています。

 

  • イベント中に起こった事件

新刻敬と竹田啓司以外は、この『ムーンテンプル』で開かれたイベントの来場者です。

 

しかしイベントの最中で『ムーンテンプル』は外界と遮断され、催眠ガスがばら撒かれ閉じ込められた人々は幻覚の中で歪曲王と名乗る人物と相対するという奇妙な事件が発生します。

 

異変を察知し現実に浮かび上がったブギーポップはムーンテンプルの通用口から潜入し世界の敵を探します。

 

その姿を偶然見かけてしまった新刻敬はブギーポップの後を追ってムーンテンプルに入りますが、他の人々と同じく歪曲王の手に落ちてしまいます。

 

またバレンタインデーに宮下藤花とデートの約束をしていた竹田啓司は待ち合わせ場所の近くで起こった異変に気付き、ブギーポップがでてきているのはと予想し異変を屋外から見守っていましたが、歪曲王から招かれてムーンテンプルの中に入りブギーポップを探す為に奔走することになります。

 

簡単に言ってしまうと『ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王』はムーンテンプルで起こった事件の全容と歪曲王の企て、そして歪曲王とは誰なのかという謎を解くというストーリーです。

 

  • ブキーポップVS怪獣

8歳の少年橋坂真が創造した『ゾーラギ』という巨大怪獣とブギーポップが戦うという展開があります。

 

歪曲王の能力によって橋坂真から生まれた『ゾーラギ』ですが、実は歪曲王にとってもイレギュラーな事態で『ゾーラギ』は暴走状態にありました。

 

『ゾーラギ』をそのまま放置しておくと現実世界に怪獣が姿を現すという世界の危機に陥ってしまう為ブギーポップはこの巨大怪獣を倒し、橋坂真の夢を『ゾーラギ』という怪獣というものから怪獣を倒し自分を助けてくれたブギーポップという正義のヒーローの夢にすり替えることで訪れた危機を防ぎます。

 

  • 寺月恭一郎の企て

故寺月恭一郎は統和機構によって作られた合成人間でした

 

彼の使命は統和機構に都合の良いように世界の経済を回すことです。

 

しかし彼の事業はうまく行き過ぎてしまい統和機構に処分されてしまいます。

 

彼自身も自分の終わりを察知していたのですが、経済を止めてしまう訳にもいかず甘んじて彼の運命を受け入れます。

 

しかしそんな彼もひとつだけ統和機構を出し抜いてやろうと計画し建てたものがムーンテンプルです。

 

ムーンテンプルで光源のシャットダウンや出入り口の封鎖、更には催眠ガスを建物内に充満させるという日常からかけ離れた試練を用意しました。

 

その非日常と言うべき困難に陥っても尚それを乗り越え『ムーンテンプル』最上層にある会長室に辿り着いた者にビデオメッセージを残していました。

 

その映像の中で寺月恭一郎は運命や趨勢と呼ばれる流れの向かう先を知ろうとするシステム『統和機構』の存在を明かし、更にこのビデオメッセージを見ている時点でその人には統和機構にマークされる価値があると喚起していただけだったのです。

 

ムーンテンプルの全てのロックを解除するパスワードがそのメッセージの中で明かされますが、事件はこれでおしまいという訳にはいきませんでした。

 

そのビデオメッセージでは歪曲王には一切触れていなかったのです。

 

  • 歪曲王の正体と企み

『ムーンテンプル』の最上層に辿り着くことのできた羽原健太郎と田中志郎でしたが、羽原健太郎が寺月恭一郎のビデオメッセージを見て歪曲王は寺月恭一郎ではない別の人物だと気づいてしまい、一緒にいた田中志郎に確認しようとしたところで歪曲王が正体を現します。

 

歪曲王は田中志郎だったのです

 

田中志郎を苛み続けている「亡くなってしまった彼女の好きという気持ちに応えてあげなければならないのではないのか」という罪悪感から生まれた歪曲王はその想いが形となり能力が作られました。

 

歪曲王は寺月恭一郎の計画に乗じて人の心の歪を癒すための実験をおこなっていたのです。

 

これはあくまでも“実験”なんだ。どうすれば人の心の歪みを癒すことができるのか、しかもそれがお仕着せの物ではなく、人々が自分の意志で治そうとできるか、それを確かめるのが目的だ。それにはこの、大勢の人間が集中して、なおかつ気を失っているこの場所はまさに打ってつけだった。もしこれを普通の街の中でやったら、事故が続出するだろう。だがこの、今のムーンテンプルなら意識を失って倒れていても誰も傷つくことがないんだ

出典:『ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王』 P.273より

 

と作中で自らの実験を説明しています。

 

しかしブギーポップによっていつの間にか歪曲王がブギーポップの敵であるという思い込みを正されこの実験は終わってしまいます。

 

歪曲王は実際には誰も傷つけておらず、事件を起こしたのは寺月恭一郎であり、更には人を癒す事を目的に行動していたのですから、世界の敵とは呼べまない存在ですね。

 

こうして事件は終わり、ブギーポップと共に会長室まで辿り着くことができた新刻敬の手によってムーンテンプルの全ロックが解除され事件は収束します。

 

  • ブギーポップによって明かされたこれまでの事件

歪曲王との戦いの中で『ブギーポップは笑わない』と『ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター』の真相が明らかにされています。

 

……かつて一人の少年がいた。その少年は、別にそれ自体では悪くもなんとない人間だった。だが彼は実は世界の敵だった。なぜなら彼には“生きること”というものに対して本人も気づかぬねぶかい憎悪があったからだ。それでもそのまま生きていたとしたら、あるいは何でもないまま、普通に生きていったかも知れない。

 だが彼は運命のいたずらで“人喰い”と出会ってしまって、自分のことをはっきり知ってしまった。

 彼自身が“人を食うものになってしまった。

怪物の方は、それが単に生存条件だったから人を殺していたが、彼の方は理由らしい理由もなく、ただただ殺し続けた。他には終点という発想がなかった。

もし今でも生きていたら彼は完全に“とりかえしのつかないもの”を探し出して、世界を破壊していただろう。

……そして一人の少女がいた。彼女は人の死を見る事ができた。それ自体では何でもない能力だった。医療関係や危機管理などの方面に進めば、役に立てることができたかもしれない。

しかし彼女はその“死”を絶対的なものだと考えてしまった。

人から“死”を取り出して寄せ集めて何か巨大な物が創れるという考えにとりつかれてしまった。

それが人という限界を“突破”することだと思ってしまった。

素晴らしいものに近づけるなら、生きている必要などない、という立場に立ってしまい、そして世界の敵になってしまった。

“死”をまったく恐れないように人の心をつくりかえてしまおう、とまで思うようになってしまった。

出典:『ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王』P278-279より

 

作品の中で明かされず謎になっていた部分がブギーポップによって補完されています。

 

  • 竹田啓司は?

歪曲王によってムーンテンプルの中に招待され、ブギーポップを探していた竹田啓司ですが、彼の出番は今作ではありませんでした

 

彼が最上層に着くころには全てが終わっており、新刻敬によって宮下藤花との待ち合わせの場所を間違えたのではないかと誤魔化され、慌てて彼は再び待ち合わせの場所に向かうことになります。

 

  • 今作について

『ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王』は登場人物達が現実と幻覚の世界を行き来する為どこからどこまでが現実に起こったことなのかわかりにくく混乱する場面が多いです。

 

また『ゾーラギ』以外は勝手に収拾がついてしまう事件であった為、何が今回ブギーポップを呼び出した世界の敵だったのかと謎の残るところもあります。

 

歪曲王も新刻敬が十分にその歪みを正していましたし、結局歪曲王は世界の危機となる存在ではありませんでした。

 

しかし本作においてブギーポップと同じように人の中に潜む内なる存在が他にもいるということが明らかになった物語と捉えることができます。

 

『ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王』については以上です。

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